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北海道新聞2004年2月24日


どうなる05年度着工(上)


立ちはだかる財源


北海道新幹線をはじめ、整備新幹線三線の未着工区間建設をめぐり、与党の論議が本格化している。
与党は七月の参院選前に、北陸、九州・長崎ルートを含めた「二〇〇五年度三線同時着工」を打ち出したい考えだが、
財源問題が大きなネック。
与党は約一兆円を想定しているが、すべての区間を建設するには足りず、着工区間や優先順位の駆け引きの行方は不透明だ。
財源問題や、三線をめぐる議論、さらには道新幹線誘致に向けた取り組みなどを二回にわたり紹介する。
(東京政経部)

政府・与党は二〇〇〇年十二月、道新幹線など三線の未着工区間の扱いを
「東北新幹線・盛岡-八戸、九州新幹線・新八代-鹿児島中央の完成後に見直す」と申し合わせた。
新規着工の論議が本格化しているのは、すでに開業した盛岡-八戸に続き、新八代-鹿児島中央も三月十三日に開業するためだ。
与党は五月に政府・与党合意にこぎつけ、〇五年度の新規着工を実現したい意向だ。

●同時開業を
道は、(1)道新幹線の開業による東北との交流促進(2)新幹線規格となっている青函トンネルの早期有効活用
(3)整備新幹線の中では北海道だけが全線未着工―などを前面に出して〇五年度着工を要請している。
東北新幹線の新青森-八戸が開業するのは八年後の一二年ごろ。
新青森-新函館の暫定同時開業に向け、道内で期待が高まっている。
ところが道新幹線着工の前には、財源問題が大きく立ちはだかっている。
与党が想定する新規着工の財源の総額は一兆円。
だが、三線で当面検討されている区間に限っても、建設費は二兆円近くに達してしまうのだ。

●前首相の力
財源の配分でカギを握るのは北陸新幹線。
着工済みの長野-富山は、十三年ごろの開業に向け工事が進行中で、今回は、富山以西のどこまで延伸するかが焦点だ。
与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームの久間章生座長(自民党幹事長代理)らは昨年末、
未着工三線の建設費を一兆円にとどめるため、富山以西の整備区間を金沢のすぐ西の車両基地「松任車庫」(石川県)までとする案を示した。
この区間の建設費は約四千億円。
新函館-新青森の四千二百億円に加え、長崎ルートは、残る二千億円で建設できる一部区間の暫定開業にとどめれば、
ほぼ総額一兆円の範囲に収まるシナリオだ。
しかし、北陸三県はもともと、三県を横断する富山-南越(福井県)の着工を要請しており、
このシナリオでは、新幹線が建設されない福井県が特におさまらない。
ただ、その建設費は一兆円近くに達し、要望通り建設すれば北海道、長崎に回せる財源がなくなる。
問題を更に複雑にしているのが政治力の存在。
北陸を地盤とする森喜朗前首相は、認可申請などで先行しているのを踏まえてこう語る。
「北陸は別格。北海道や長崎と一緒にしてもらっては迷惑だ」。
年末の政府与党合意文書からは、原案にあった「三線同時着工」の表現が消え、前首相としての隠然たる力を示した。
結局、久間座長らのシナリオは仕切り直しとなったが、今後も北陸の動向が北海道新幹線の着工に大きく影響するのは間違いない。

●部分着工も
一方、九州では鹿児島ルート・博多-新八代が二〇一二年ごろの開業に向けて建設されている。
今回は、博多を起点とする長崎ルートが新規着工論議の対象だ。
同ルートは、博多-武雄温泉は在来線を使用し、その先は長崎まで整備する計画。
ただ、地元は今回の見直しで、財源難と地域間競争を前にして、
長崎までの全面着工ではなく武雄温泉を起点とする部分着工でもやむなしとの考えで現実路線の色彩を強めている。

路線
区間
建設費
(億円)
延長
(km)
北海道
新函館-新青森
4200
149
※貨物列車の安全対策費
800億円は含まない
北陸

富山-石動
2200
35
富山-松任車庫は
約4000億円
石動-金沢は建設中
金沢-南越
7700
95
9900
130
九州
武雄温泉-長崎
4000
66


総額1兆8100
345

※建設費は国土交通省の試算(1999年4月価格)。
区間は地元の着工要望内容に基づく。
注の金額は与党、国交省の概算。



北陸では


投資効果「最も高い」
原発カードで国けん制

北陸新幹線の延長を待つJR福井駅。
新幹線開通を見込んだ駅の立体交差事業や土地区画整理が、既に着々と進んでいる。
同駅を通る北陸新幹線の金沢(石川県)-南越(福井県武生市)の認可申請が出されたのは一九九六年。
北海道や九州・長崎ルートより六年も先行した。
これに加えて、北陸新幹線の強みは、投資効果の高さにある。
長野-福井間は開業後十年で、JRに年間三百五十億円程度の収支改善効果があると地元は試算。
増益分は国が徴収するため、政府や与党幹部も「投資効果は北陸が最も高い」と認める。
「北海道、長崎は正直言って邪魔ですね」。福井県議会の幹部はこう本音を漏らす。
同県は、関西への電力供給基地として、原子力発電所が並ぶ。
「今回駄目なら10年は着工が先送りになる」と懸念される中、同県議会は昨年末、
「新規着工が実現しない場合、国の原子力政策に反対も辞さない」と決議し、原発カードを切って国をけん制した。
福井県は、総裁派閥森派の衆参両議員四人を抱える。
関係者は「論理とは別次元で決まるのが”政治新幹線”と言われるゆえんだ」と、森氏らの政治力に望みをつなぐ。
ただ、十八日の自民党の整備新幹線建設促進特別委員会(小里貞利委員長)で北陸三県は南越までの早期着工を主張したが、
明確に二〇〇五年度着工を求めたのは南越駅が予定される福井県だけで、微妙な考え方の違いをうかがわせた。
石川、富山の関係者からは「財源を考えると段階的着工もやむをえない」との声が漏れ始め、松任車庫までを着工し、
南越は認可にとどめる案など「落としどころ」を探る動きも出てきた。


建設費どう確保


一部財投から借金
地元負担3分の1

整備新幹線の建設財源は(1)本州JR三社からの「既設新幹線譲渡収入」の一部(2)国の公共事業費(3)地元自治体の負担
―がほぼ三分の一ずつ。
毎年度、総額二千億円規模が計上されている。
既設新幹線譲渡収入は東海道、山陽など新幹線四線を国がJRに売却した代金。
使い道は旧国鉄の債務返済が中心だが、二〇一七年度上半期までは一部を新幹線建設の特定財源にする制度だ。
これに基づき、与党が考案した新規着工の財源は次のようなものだ。
現在建設中の区間は一二年度前後に完成するため、一三年度から現行の制度が切れる一七年度まで五ヵ年は、
未着工区間用に、毎年二千億円の財源が見込める。こうして「新規建設財源一兆円」が設定された。
将来の財源を〇五年度の新規着工へ前倒しするには借金が必要。
与党は「一三年度以降の譲渡収入を担保に郵便貯金などの財投資金や銀行から借り入れし、同年度以降の譲渡収入で返済する」との考えだ。
一三年度から制度が切れる一七年度上半期まで、四年半の譲渡収入は約三千三百億円。
先食いすると利息の支払いで三千億円に目減りするが、これを一二年度まで新規着工区間に投入する。
現在建設中の区間が完成後の一三年度以降は、国の公共事業費を回せる。
国土交通省の試算では国の公共事業費と地方負担で合計七千億円を投入、総額一兆円に達するのは十九年度となる。
道新幹線の新青森-新函館の地元負担は道と青森県が分担し、道側は六割弱。道の試算では八百三十億円程度になる。
危機的財政の道には大きな負担だが、道は負担の九割を借金の「起債」でまかない、
返済の半額を国が肩代わりする制度を使って実質負担を約四百五十億円、年間の負担を最大四十億円程度と試算する。
また、地元負担の一部は沿線自治体にも振り向けられる。




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