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北海道新幹線の良くある誤解


よくある誤解1:北海道新幹線なんか造って日本の財政を破綻させる気か!


回答:
整備新幹線の予算通過については、朝日、読売、毎日、日経など新聞各社がかなり批判的であったため、
政府の財政破綻を助長するのではないかと懸念する方が多いのは無理からぬことです。しかし、
ちゃんと計算してみれば、たかが新幹線を造ったところで日本政府が破綻することなどありえない
ということがよくわかります。

まず、北海道新幹線新青森〜札幌間の総工費は1兆5千億円です。もちろんこれから十数年にわたって
建設されるので年間拠出はこの1割にも満たないのですが、それでもすごい巨額ですね。しかし、他の
予算はどうかというと、防衛費が5兆円、道路整備費が地方分を併せて10兆円、社会保障費が20兆円!
こちらは年間予算です。つまり、新幹線がいくら金が掛かると言っても、防衛費の3.6か月分、
道路整備費の1.8か月分、社会保障費の0.9か月分でしかないのです。

まあ、このような意見は、例えるなら年収450万円の人が15万のPCを買ったために破産する
と言っているようなものですね。

よくある誤解2:北海道新幹線なんか税金の無駄遣い!!!


回答:
整備新幹線の場合は、独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構がいわば大家さんとなり、
店子となるJRが需要予測に基づく収支改善見込額とほぼ同等の額を線路使用料として支払う形になります。
これと隣接区間のJRの増益に関する法人税を含めて何年で元をとれるか、を新青森〜新函館で
試算してみると、以下の通りとなり、税金の無駄遣いと言う批判は的外れと言えるでしょう。

JR東日本の根元受益=税引き前利益として、
   建設費 5000億円、貸付料 45億円/年、根元受益からの法人税増66億円/年
   建設費/(貸付料+税収増)=45.0年
   (貸付料+税収増)/建設費=2.2%
   (法人税の実効税率は43〜45%だが、このうち13〜15%は地方税で整備新幹線の費用を負担
    した自治体とは違う地域の収入となってしまうので国税の30%だけを考えた)

当然、12月頃に話題になった根元受益に対するJR東日本の負担があるともっと元をとれる期間が
短くなり、
   建設費 5000億円、貸付料 265億円/年(根元利益含む)、
   建設費/貸付料=18.9年
   貸付料/建設費=5.3%

なお、新函館〜札幌間を含めた北海道新幹線全体の収支改善効果は公表されていないため、同様な計算は
できませんが、私的な試算を2例挙げておきます。
ttp://www.sapporo-cci.or.jp/shinkansen/syusi001.html
(北海道新幹線建設期成会による本格的だが、やや過大な試算)
ttp://shinkansen.s53.xrea.com/yosou/goldfish_riyousha_shunyu_mikomi.htm
(北海道新幹線スレ住民による、大雑把だが、やや保守的な試算)

よくある誤解3:北海道新幹線なんか造っても大赤字!!!


回答:
まず、店子であるJRは、そもそも大赤字になる見込みならば経営を引き受けない
→法規によりJRが引受を受諾しなければ建設できない。ので、経営を引き受ける以上、
黒字経営をする自信があると考えてよいでしょう。
大家さんである、独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構≒政府の採算性は、
よくある誤解(その2)の回答の通りです。

よくある誤解4:北海道新幹線なんか造っても東京〜札幌は5時間位かかるから誰も乗らないよ!
         東京〜札幌はだいたい東京〜博多と距離が同じなんだから、みんな飛行機を使うに決まっているよ!


回答:
東京〜札幌間は実キロベースで1035kmで、だいたい東京からの距離は博多と小倉の中間位になるために
5時間はかかると思い込んでいる方が多いようです。しかし、東北・北海道新幹線は、東海道新幹線よりも
最小曲線を大きくとった規格で作られているため、格段に走行条件がよく、500系並の最高速度300km/h
運転でも4時間20分前後と見込まれています。
ttp://www.sapporo-cci.or.jp/shinkansen/

さらにその走行条件を生かして350km/hで走行するとなると3時間57分と、4時間以内での到達が可能に
なります。(別資料で、無停車なら3時間41分で走行可能と言う試算あり)
ttp://www.hokkaido.cci.or.jp/sinkansen/02.html

これは決して夢物語などではなく、既にJR東日本が、それを上回る360km/hで営業運転可能な新幹線車両の
開発を進めており、その新幹線高速試験電車 FASTECH 360が今年6月にデビューします。
ttp://www.jreast.co.jp/development/theme/comfortable/comfortable01.html

以上から東京札幌間は3時間台後半から、最悪の場合でも4時間台前半で結ばれることになりますね。

また、航空機との競争においては、市街地と空港との所要時間も大きな要素になってきます。福岡空港は
博多駅から地下鉄で5分の距離にあり、福岡の市街地からの所要時間は実質的に差がありません。これに対し、
千歳空港は、札幌駅から快速で36分、他の市街地からも距離があり、かなり競争条件が異なります。

以上の2点より、東京〜札幌間の航空機との競争条件としては、東京〜博多よりも、むしろ、新幹線側の所要時間が
約4時間、かつ空港から市街地までの時間距離がある東京〜広島の状況により近くなると考えられています。

参考までに、東京〜広島間の新幹線のシェアは約4割です。

誤解5:儲かるなら北海道やJRが金を出せばいいだろ!


回答:
「儲かるなら」は「採算が取れるなら」と同義と考えますが、
このようなことをおっしゃる方は「儲からないものを欲しいなら、北海道やJRが金を出せばいいだろ!」という言い回しをされたほうが自然ではないでしょうか。
当然、この場合は「儲からない(採算が取れない)」ことの根拠が必要になりますが。

なぜなら、「採算が取れるのなら国の金でも別に問題ない」と思えるからです。
優良な事業に税金が使われることを反対する人は少ないと思います。優良でも自分が使わないから反対!というのはただのエゴです。
(あなたが便利に思っているインフラは、それを使わない人の税金も混ざっているかもしれませんよ?)

まあ、採算が取れるなら北海道(道内の市町村を含む)やJRがお金を出してもいいかも知れませんが、
なぜ国が出すのかというと、北海道新幹線を含めた整備新幹線は「国(独立行政法人 鉄道施設・運輸施設整備支援機構)が事業主体だから」です。
新幹線を計画するのも、作る(発注する)のも、完成した施設一式を所有するのも国であると同時に国の資産となります。
それが北海道という土地に作られて、JRが運用するというだけの話であって、地方自治体やJRが主体となる計画や事業ではないのです。

国が計画して、国が所有する資産なのだから、国がお金を出すのはおかしいことでもなんでもありません。
北海道やJRが欲しがっているものを国がお金を出してあげてるという発想は間違いです。

なぜ整備新幹線が国主体なのかというと、地方限定の事業ではなく、「全国新幹線鉄道整備法」に基づく国家レベルの事業だからです。
北海道新幹線はそれだけで完結するものではなく、東北新幹線とつながり、関東以北の本州と北海道を結ぶことが前提です。
国土の軸として、実質航空しかない大都市札幌への交通網をより強固にする事業です。そして、その利用者は当然北海道民だけではありません。

このことから考えても、北海道やJRだけに負担を求めるのは逆におかしくはないでしょうか。

誤解6:北海道やJRだっておいしい思いをするだろ!維持費とかどうするんだ!


回答:
国主体の事業といえども北海道やJRもおいしい思いをするのは確かなので、一応両者ともそれなりの負担はあります。整理しますと・・・

・国
 建設費の2/3を負担します。そのうちの半分が一般会計、半分が新幹線譲渡収入(東海道・山陽・東北・上越をJRに売却した時の利益)です。
・地元(北海道)
 建設費の1/3を負担します。北海道新幹線の場合、青森県の負担もあるので北海道の負担はこれよりも少し少なくなります。
・JR
 建設費は負担しませんが、運営中は国に「新幹線リース料」を支払います。
 支払期限は施設を使っている限り毎年です。この使用料はJRが赤字にならない範囲で設定されるとはいえ、売上からすればかなりの割合になります。
 また、施設の維持費や修繕費、車両の新造・修繕に要する費用等、営業に要する費用は全てJRが負担します。

上記以外に、既設の整備新幹線(長野など)から得た使用料も建設費に充てられます。
また、北海道新幹線によって東北新幹線の利用者が増えるであろうことから(これを根元受益といいます)、JR東日本などにも負担させる案が検討されています。
原則借金はしない財源スキームになっています(長野だけはオリンピックに間に合わせるため、例外的に一部借金使用です)。

施設の維持管理は全てJRがやるため、国や地元は建設費以外びた一文出しません(新たに駅を追加するなどといった場合は別)。
他にお金を出す可能性があるとしたら、JRが赤字になってその損失を税金で補填するなどの場合でしょうか。
しかし、誤解3にあるとおり赤字になるようなものはJRは引き受けないので、ありえないといっていいでしょう。

※施設の正式な保有者は国ではなく誤解2にある「独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構」になります。

誤解7:室蘭や苫小牧は通らないんでしょ?北周りで採算取れるわけないじゃん。

回答:
確かに、南回りの路線とした場合には室蘭・苫小牧・千歳などの都市部を通過するため、南回りを
支持する意見もありますが、以下の通り、北回りとした場合の利点も多く、最終的には北周りとする
ことが決定されています。
(1)有珠山・樽前山の火山活動の影響を避けるられる。
   特に有珠山は、頻繁に活動する活火山でありその影響で長期運休を余儀なくされる可能性が
   高いと言えます。
(2)南回りの室蘭・苫小牧地域の東北・関東〜道央流動に占める割合は高くない。
   平成12年の代表交通機関別生活圏間流動表によると、東北・関東〜道央流動の年間1,075万人
   のうち、室蘭・苫小牧・静内の南回り地域が占める割合は13.0%、逆に小樽・倶知安の北回り
   地域が占める割合は8.5%、残りの78.5%が札幌などです。
(3)南回りの場合は距離が長くなるため、建設費と開業後の所要時間が増大する。
   北回りが新函館〜札幌間が約200kmなのに対して、南回りは約300kmになるため、建設費は
   1km50億円として約5,000億円の増大、開業後の札幌までの所要時間は20〜25分程度の
   増加となります。(非公式に噴火湾の海底・海中トンネル案を提唱する方もいますが、この場合も
   青函トンネルよりも海底部分が長いトンネルが必要になるため建設費の大幅な増加は避けられ
   ないと考えられます)
(4)南回りは、既に空路を通じて関東圏との高速交通が確立しているが、北回りには無い。
   観光需要が多い小樽・ニセコ地域は、千歳空港から距離があるため、この地域への東北・関東
   方面からの利用者は、新幹線利用の割合が高くなると予想できます。

なお、関連した話としてよく出てくる札幌〜千歳空港間の「千歳新幹線」については、北海道 新幹線スレで
議論したところ、採算が取れないという結論が出ています。
http://shinkansen.s53.xrea.com/yosou/chitoseshinkansen.htm

以上のことを考えると、計画通りの北周りがもっともコストパフォーマンスが高く、理にかなった計画である
といえます。












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